こんにちは。愛知つのだ産業医事務所株式会社の産業医角田拓実です。

今回は質問でよくいただく「産業医の報酬はどのように支払えばよいのか?」という質問に回答していきます。

産業医の報酬に関しては国税庁が見解を出していますのでその内容に従って対応すれば問題ありません。

産業医の報酬体系の基本

産業医の報酬は、いくつかの要素が組み合わさって決まります。個人・法人や契約形態によって、報酬の決まり方が異なるため、注意が必要です。

医療法人と産業医の契約のあり方

例えば、従業員1000人の工場を運営するA社が、従業員の健康を守るために産業医のB先生と契約するとします。

ケース1:B先生が個人でクリニックを開業している場合

A社とB先生は直接契約を結びます。この場合、B先生はA社から直接報酬を受け取ります。

ケース2:B先生がC病院という医療法人に所属している場合

A社はC病院と契約を結びます。B先生はC病院からA社に派遣される形となり、A社はC病院に報酬を支払います。

このように、産業医と一口に言っても、契約相手が「個人」か「法人」かによって、契約形態が変わってくるのです。

産業医の報酬は個人と法人で異なるのか?

このように、契約相手によって、報酬の扱われ方が変わることに注目しましょう。

個人事業主の産業医への報酬は「給与」として扱われます。 一方、医療法人に支払われる報酬は「委託料」とみなされます。

契約相手 報酬の扱い 消費税
個人事業主(個人) 給与 非課税
医療法人(一般法人) 委託料 課税

個人には給与ですので所得税が課せられ源泉徴収が発生することも留意すべきでしょう。

これは、国税庁の質疑応答事例でも明確にされています。企業は、契約相手が個人か法人かによって、源泉徴収や消費税の処理を変える必要があるため注意が必要です。

産業医の報酬|国税庁 (nta.go.jp)

個人事業主の産業医の報酬は給与形式なのか?

個人事業主に関しては産業医の報酬は、必ずしも毎月決まった額が支払われる「給与」とは限りません。

例えば、原則的には個人・個人事業主として企業に直接雇用されて、毎月決まった日にお給料を受け取る場合は「給与」扱いとなります。

一方、原則外にはなりますが、時間的・空間的独立性が保たれているとの解釈で業務委託として契約を結び、行った業務内容や時間数に応じて報酬が支払われる場合は、「給与」ではなく「報酬」として処理が行われていることも少なくないようです。

この部分に関しては国税の見解の「原則」以外の部分を想定する形になっており、グレーな部分かと考えています。税務署に指摘を受ける場合も想定されうることかと考えます。慎重に進めるのであれば事業者様に関しては税理士・会計士とよく相談の上契約を結ばれることをお勧めしております。

なお、労働衛生コンサルタント業務(個人事業主として報酬払いが可能な資格、産業医の資格の一種)をメインの業務にし、包括して産業医業務を行うことで個人事業主で報酬として受け取ることが可能という解釈で契約書を作成する先生もいるようです。

こちらに関しても実質は産業医業務を行っているので一部を給与として分割する必要あると考えております、税務に関しては契約書ではなく「実態」を見られます。

こちらに関しても契約書を結ぶ前に顧問税理士と相談の上対応を行っていただくと後日のトラブルを防ぐことに繋がります。

愛知つのだ産業医事務所株式会社 産業医 角田拓実