現代社会において、企業にとって従業員の健康管理は、もはや無視できない重要な経営課題となっています。 なんと、経済産業省が認定する「健康経営優良法人」制度をご存知でしょうか? この制度では、従業員の健康管理を積極的に行い、健康経営に取り組む優良な企業を表彰しており、多くの企業が注目しています。

健康経営優良法人認定を受けるためには、企業は「健康宣言」を提出し、従業員の健康に対する取り組み姿勢を明確に示す必要があります。 では、健康宣言とは具体的にどのようなもので、どのように作成すれば良いのでしょうか?

この記事では、健康経営優良法人制度における健康宣言の役割、作成における注意点、そして産業医との連携の重要性について詳しく解説していきます。 自社の健康経営を推進し、従業員の健康と企業の成長を同時に実現するためのヒントが満載です。

健康経営優良法人と健康宣言の基本

健康経営優良法人や健康宣言という言葉、ニュースなどで耳にする機会が増えましたよね。 でも、「具体的にどんなものなのかよくわからない…」と感じている方も多いのではないでしょうか?

健康経営優良法人とは、従業員の健康を経営的な視点で捉え、戦略的に健康増進に取り組む企業のこと。 健康宣言は、その取り組みを表明するもので、健康経営優良法人認定には欠かせないものです。

健康経営優良法人とは?

健康経営優良法人とは、従業員の健康に配慮した経営を行う企業を国が公式に認める制度です。 イメージとしては、健康意識の高い企業を表彰する制度、いわば「健康経営優良企業認定証」のようなものだと考えてください。

この制度には、規模の大小によって、「大規模法人部門」と「中小規模法人部門」の二つがあります。 例えば、従業員1000人を超えるような大企業であれば「大規模法人部門」、従業員300人の中小企業であれば「中小規模法人部門」に申請することになります。(大まかな表現です。業種や資本金により定義がありますのでこちらに関しては経済産業省のHPをご確認ください。)

健康経営優良法人として認定されると、企業のイメージアップや優秀な人材の確保、従業員のモチベーション向上、さらには生産性向上や企業価値の向上など、様々なメリットがあるとされています。

健康宣言とは?

健康宣言とは、企業が「従業員の健康を大切にします!」と宣言することです。 これは単なる言葉だけの宣言ではなく、具体的な行動計画を含んでいます。

例えば、「社員食堂で栄養バランスのとれた食事を提供します」「運動機会を増やすために、週に1度は運動しやすい服装で勤務できる日を設定します」「禁煙を推進するために、禁煙外来への通院費用を補助します」といった具体的な取り組みを宣言します。

健康宣言を行うことで、従業員の健康意識を高め、健康的な行動を促進する効果が期待できます。 また、企業の社会的責任を果たすという観点からも重要な取り組みと言えるでしょう。

健康経営優良法人と健康宣言の関係性

健康経営優良法人になるためには、健康宣言を行い、健康経営に取り組む姿勢を社内外に示すことが必須条件となります。 健康宣言は、健康経営優良法人の申請書類の一つとして提出する必要があり、企業がどのように健康経営に取り組むのかを具体的に示す必要があります。

健康宣言の内容は、健康経営優良法人の審査基準に基づいて作成する必要があります。 審査基準には、従業員の健康状態を把握するための定期的な健康診断の実施状況や、従業員のストレスを軽減するための相談窓口の設置状況など、具体的な項目が細かく定められています。

例えば、「従業員の健康診断受診率100%を目指します」「ストレスチェックを年に1回実施し、結果に基づいた適切な対策を実施します」といった具体的な目標を設定することが重要です。 これらの取り組みを通じて、従業員の健康増進を図り、生産性や企業価値の向上を目指します。

効果的な健康宣言を作成するポイント

健康宣言は、会社が従業員の健康のために、どんなことを目指していくのか、みんなに約束することを宣言するものです。ただ単に宣言するだけでは、なかなか目標は達成できません。経済産業省が認定する健康経営優良法人制度では、従業員の健康管理を積極的に行い、健康経営に取り組む優良な企業を表彰しており、健康宣言はその申請に必須です。健康宣言は、いわば会社の健康に対する「やるぞ!」という意気込みを示すものであり、健康経営優良法人制度で求められる「具体的な行動」を示すための羅針盤とも言えます。

効果的な健康宣言を作成し、従業員一人ひとりの健康増進、ひいては企業の成長へと繋げていくために、以下のポイントを押さえていきましょう。

具体的な目標設定と数値化

健康宣言には、どんな目標に向かっていくのかを、はっきりと示すことが重要です。「従業員の健康意識を高める」といった抽象的な目標ではなく、「毎日の睡眠時間を平均7時間にする」「従業員の30%が毎日30分以上の運動をする習慣をつける」といったように、具体的な数値目標を設定することで、目標達成度合いを把握しやすくなります。

例えば、健康診断の受診率を向上させたいのであれば、「健康診断の受診率を現状の70%から3年後には90%にする」といった具体的な目標を設定します。目標達成のために、未受診者への個別アプローチや受診しやすい環境整備などの具体的な施策を盛り込みます。

従業員参加型プログラムの実施

従業員みんなが楽しみながら参加できる健康プログラムを実施することで、健康意識の向上に繋がり、目標達成を促進することができます。例えば、ウォーキング大会やヨガ教室、健康に関するクイズ大会など、従業員が楽しみながら参加できる企画を検討してみましょう。健康宣言事業に参加すると、協会けんぽが健康づくりのサポートをしてくれるため、積極的に活用してみましょう。

例えば、メタボリックシンドロームの予防を目的としたプログラムであれば、管理栄養士による食事指導や、運動指導士による運動教室などを企画し、従業員が楽しみながら健康的な習慣を身につけられるように工夫します。

メンタルヘルス対策への注力

心の健康は、体の健康と同じくらい大切です。健康宣言には、従業員のストレスを軽減するための取り組みも盛り込みましょう。例えば、ストレスチェックを定期的に実施したり、相談しやすい環境を作るために、匿名で相談できる窓口を設けることも有効です。

さらに、職場環境の改善にも取り組みましょう。例えば、業務の効率化を図ることで残業時間を削減したり、コミュニケーションを円滑にするための研修を実施するなども効果的です。

従業員への周知と啓発活動

せっかく作った健康宣言も、従業員に知ってもらえなければ意味がありません。社内ポスターやメールマガジンなどを活用して、健康宣言の内容や、健康に関する情報を分かりやすく発信しましょう。また、健康に関するイベントを開催したり、健康に関する情報をまとめた冊子を配布するのも良いでしょう。

例えば、社内イントラネットに健康情報を掲載したり、健康に関するクイズを掲載して、楽しみながら健康について考えるきっかけを作ることができます。

定期的な見直しと改善

健康宣言は、一度作成したら終わりではありません。会社の状況や従業員のニーズの変化に合わせて、定期的に見直しを行い、改善していくことが大切です。例えば、毎年の健康診断の結果や、従業員からのアンケートなどを参考に、健康宣言の内容をより良いものにしていきましょう。

目標達成状況を定期的に評価し、達成度が低い場合は目標や施策の見直しを行います。また、従業員からの意見や要望を収集し、健康宣言に反映することで、より効果的なものへと進化させていきましょう。

健康宣言作成における産業医の役割と相談窓口

健康宣言の作成は、企業にとって従業員の健康を守るための重要な取り組みです。まさに、会社という船を安全に航海させるための羅針盤を作るようなものです。しかし、羅針盤作りは専門的な知識が必要です。健康宣言も、何から始めたら良いのか、どのように進めたら良いのか迷うこともあるでしょう。そんな時、心強い味方となるのが産業医や健康経営アドバイザーです。産業医は、企業の健康管理のエキスパートとして、健康宣言の作成から運用まで、様々なサポートを提供しています。

企業規模が大きく、産業医が複数人いる場合は、担当者を決めるとスムーズに連携を進められます。また、健康経営を推進するリーダーとなる担当者を決め、産業医や健康保険組合などの外部機関と連携し、専門的な知識やノウハウを積極的に活用していくことが大切です。これは、航海の安全のために、船長だけでなく、航海士や機関長など、それぞれの専門家が協力し合うことと同じです。

社内体制の構築と産業医の活用

健康宣言を効果的に作成し、運用するためには、社内の協力体制が欠かせません。

まず、リーダーシップを発揮し、航海の舵取り役となる「健康経営担当者」を決めましょう。そして、職員の健康と安全を守る専門家である「産業医」や、サポート役である「健康保険組合」などと連携し、専門的な知識やノウハウを積極的に活用していくことが重要です。

立場 役割例
健康経営担当者 健康宣言作成の責任者、社内外の調整、健康経営施策の実施。
産業医 健康宣言作成のアドバイス、健康リスクの評価、健康教育の実施など。健康管理の専門家として、業務に従事します。
健康保険組合 健康宣言作成のサポート、健康経営に関する情報提供など。健康宣言を取得するサポートも行っています。

このように、各々が役割を理解し、連携することで、より効果的な健康宣言の作成と運用が可能になるのです。

健康リスクの評価と対策

健康宣言を作成する際には、従業員の健康リスクを把握することが重要です。

健康診断の結果やストレスチェックなどを活用し、従業員の健康状態や課題を分析します。これは、船体の点検や海図の確認にあたります。その上で、健康リスクの高い従業員に対しては、個別指導や健康教育などの対策を講じる必要があります。例えば、健康診断でメタボリックシンドロームと診断された従業員には、医師や保健師による個別指導を行い、食生活や運動習慣の改善を促します。また、ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員には、産業医による面接指導を行い、必要に応じて休養や治療を勧めます。

まとめ

健康経営優良法人認定には、従業員の健康管理を積極的に行い、健康経営に取り組む姿勢を示す「健康宣言」の提出が必須です。効果的な健康宣言を作成するには、具体的な目標設定と数値化、従業員参加型プログラムの実施、メンタルヘルス対策への注力、従業員への周知と啓発活動、定期的な見直しと改善が重要です。また、産業医と連携し、健康リスク評価や従業員への健康教育・相談などを実施することで、従業員の健康増進と企業の成長を促進していくことが大切です。

産業医/健康経営エキスパートアドバイザー 角田拓実