産業医資格の取得方法について

産業医の資格って、医師免許があれば誰でもなれるわけじゃないの?必要な単位って?オンライン学習ってできるのかな?と、疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?

医師免許を取得したばかりのA先生も、そんな疑問を持つ一人でした。

「医師免許は取得したけど、臨床医として働く以外の道も考えてみたいなぁ。患者さんを診療するだけじゃなくて、企業で働く人たちの健康を守る産業医にも興味があるんだよね。」

A先生は、大学時代の友人で、企業で働く産業医のB先生に相談してみることにしました。

「産業医って、企業で働く人の健康を守る、いわば会社の保健室の先生みたいな存在だよね。でも、医師免許があれば誰でもなれるわけじゃないんだ。」

B先生の言葉に、A先生は少し驚きました。

「実は、産業医になるには、医師免許に加えて、専門的な知識やスキルを証明する資格が必要なんだ。必要な単位を取得して、初めて産業医として認められるんだよ。」

B先生は、産業医の仕事内容や資格取得の道のりについて、A先生に詳しく教えてくれました。

この記事では、A先生のように産業医資格に興味を持つ医師の皆さんに向けて、資格取得に必要な単位研修やオンライン学習について、詳しく解説していきます。

産業医資格の取得に必要な単位研修とは?

産業医になるためには、医師免許を取得した上で、さらに専門的な知識やスキルを身につける必要があります。

これは、A先生が医師免許を取得するために、6年間の医学部での勉強と、医師国家試験に合格することと同じように、産業医としても、労働者の健康を守るという専門的な役割を担うために、必要な知識やスキルを習得する必要があるのです。

産業医に必要な知識やスキルを学ぶための研修は、様々な機関が実施しており、テーマも多岐に渡ります。

例えば、「職場におけるメンタルヘルス対策」や「過重労働対策」、「VDT作業と健康」、「化学物質による健康影響」といったテーマの研修を受講することで、産業医として必要な知識を深めることができます。

これらの研修を受けることで、「単位」と呼ばれるポイントのようなものを得ることができ、必要な単位数を集めることで、産業医として認定される資格を得ることができます。必要な単位数は、全部で50単位以上。1時間の研修で1単位もらえるので、50時間以上勉強する必要があるということになります。

オンラインでの産業医研修の実施有無について

「仕事や家事などで忙しくて、まとまった時間を取って研修を受けるのが難しい…」

そんな悩みを持つ方もいるかもしれません。A先生も、忙しい臨床医としての仕事をこなしながら、どうやって産業医の勉強時間を確保しようか悩んでいました。

近年では、インターネットを使って、自分のペースで学べるオンライン研修も増えてきました。場所や時間に縛られずに、自分のペースで学習を進められるのは、オンライン研修の魅力です。

では、産業医の研修もオンラインで受けられるのでしょうか?

結論から言うと、初回の産業医資格取得に関しては単位が認められるものはほとんどありません。

日本医師会が主催する産業医web研修会では、毎年テーマを変えながら、最新の知識や情報を学ぶことができる試みとして実践されています。

しかしながら、現在医師会が主催するものは「産業医更新時」の単位となっているので初回取得は講義に出席して単位を取得する必要があります。

今後は少しずつ緩和される可能性がありますが現在は新規では不可能な状況になっています。

独自のオンライン講習は単位がもらえないことがほとんど

現在オンラインでの産業医に関わる講習では単位がもらえないことがほとんどです。

産業医プレミアムセミナーなどのオンラインと現地での講習とのハイブリッド型でも現地のみ単位が付与されることが通例です。

さらに、悪影響としてメルカリといったオンラインフリマサイトで産業医講習会の単位の交付が厳密に行われるようになりました。

2023年秋の学会では単位取得の際に名前や所属の明記が必要になり、単位シールの番号にも数字が記載され管理されるようになりました。

産業医資格取得におけるオンライン学習のメリットとデメリットは?

現在はまだ始まったばかりのオンライン講習ですが、実際に実施されるようになれば、以下のようなメリット・デメリットがあると考えます。

メリット 説明
時間や場所の自由度が高い インターネット環境があれば、いつでもどこでも学習できます。
自分のペースで学習できる 動画を止めたり、巻き戻したり、自分のペースで学習を進めることができます。
比較的費用が安い 通学型の研修と比較して、移動の費用を抑えられることが多いです。

一方で、デメリットも存在します。

デメリット 説明
モチベーション維持が難しい 自分のペースで学習できる反面、モチベーションを維持するのが難しい場合があります。
実践的なスキルが身につきにくい オンライン学習だけでは、実践的なスキルを身につけるのが難しい場合があります。
通信環境が必要 安定したインターネット環境が必要です。
質の高い講座を見極める必要がある オンライン講座は、質のばらつきがあるため、信頼できる教育機関や講座を選ぶ必要があります。

 

産業医資格取得におけるオンライン学習の信頼性について

オンライン学習は、場所や時間に縛られずに自分のペースで学べる、現代人にとって非常に便利な学習方法ですよね。しかし、産業医資格取得という重要な目標においては、「本当にオンライン学習だけで大丈夫なのか?」と不安に感じる方もいるのではないでしょうか?従来の通学形式の研修とは異なり、その信頼性や有効性に疑問を持つ方もいるかもしれません。

例えば、医師免許を取得したばかりの若い医師が、臨床経験を積みながら産業医資格の取得を目指すとします。慣れない勤務環境で日々勉強しながら、従来の通学形式の研修に参加するのは、時間的にも体力的にも負担が大きいですよね。しかし、オンライン学習であれば、移動時間や拘束時間を気にせず、自分のペースで効率的に学習を進めることができます。

オンライン学習で取得した単位が産業医資格取得に認められるのか?

結論から言えば、オンライン学習で取得した単位は、適切な研修を受講すれば、5単位まで産業医資格更新に認められます。日本医師会が認定する産業医の更新のためには、20単位以上の産業医学基礎研修を修了する必要があります。昔は、この研修といえば、決まった会場へ出向いて、決められた時間割に沿って受講するのが一般的でした。

しかし、近年では、インターネット環境を活用した試みが始まっており受講できるオンライン研修が企画され始めています。。

では、オンライン研修であれば何でも良いのでしょうか?いいえ、そうではありません。オンライン研修で取得した単位が認められるためには、日本医師会が定める基準を満たしている必要があります。具体的には、研修内容が産業医に必要な知識やスキルを習得できるものであり、研修時間やカリキュラムが適切に設定されていることなどが求められます。

信頼できる機関が提供する質の高い研修を受講することが重要です。日本医師会が認定する研修を受講すれば、安心して学習を進めることができます。

オンライン学習での単位取得の費用や期間について

オンライン学習は、通学形式の研修と比較して、費用面でも時間面でも、多くのメリットがあります。

まず費用についてですが、オンライン学習は、会場費や移動費などのコストがかからないため、一般的に通学形式の研修よりも安価に受講できます。忙しい医師にとって、費用を抑えながら効率的に学習できる点は大きな魅力と言えるでしょう。

期間についても、オンライン学習は自分のペースで学習を進められるため、短期間で集中的に学習することも、数ヶ月かけてじっくりと学習することも可能です。例えば、まとまった休暇が取れる場合は、集中的にオンライン研修を受講することで、短期間で必要な単位を取得することも可能です。

オンライン学習による単位取得が産業医資格に与える影響は?

オンライン学習で単位を取得することは、産業医資格取得を目指す上で、多くのメリットがあります。

  1. 時間と場所の制約を減らし、効率的に学習できる: オンライン学習は、インターネット環境さえあれば、いつでもどこでも学習できます。忙しい医師にとって、通勤時間や休憩時間などの隙間時間を有効活用できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
  2. 最新の知識や情報を習得できる: オンライン研修は、常に最新の知識や情報を反映した内容に更新されることが多いです。産業医学は日々進歩している分野であるため、常に最新の情報を学び続けることが重要です。
  3. 費用を抑えられる: オンライン研修は、通学形式の研修と比較して、費用が抑えられることが多いです。費用を抑えながら、質の高い研修を受講できる点は大きな魅力です。

しかし、オンライン学習には、いくつか注意すべき点もあります。

  1. 自己管理が重要になる: オンライン学習は、自分のペースで学習を進められる反面、自己管理が求められます。学習計画を立て、モチベーションを維持しながら、計画的に学習を進めていく必要があります。
  2. 質問できる機会が限られる: オンライン研修によっては、講師に質問できる機会が限られている場合があります。疑問点を解消しながら学習を進めたい場合は、質問しやすい環境が整っているかを確認しておきましょう。

オンライン学習は、メリットとデメリットを理解した上で活用することが重要です。

産業医として活躍するためのスキルや知識を身につける方法は?

産業医として活躍するためには、医学的な知識はもちろんのこと、労働衛生に関する法律や制度、心理学、コミュニケーションスキルなど、幅広い知識やスキルが必要とされます。

これらの知識やスキルを身につけるためには、産業医の資格を取得した後も、継続的な学習が欠かせません。日本医師会では、認定産業医制度を設けており、生涯研修として、最新の知識や技術を習得するための研修会などを開催しています。

具体的には、認定産業医の資格を維持するためには、5年間で20単位以上の生涯研修を受ける必要があります。この生涯研修は、日本医師会や都道府県医師会などが開催する研修会を受講することで取得できます。研修内容は、労働衛生法規の改正点やメンタルヘルス対策、過重労働対策など、多岐にわたります。

また、実際に企業で産業医として働きながら、経験を積むことも重要です。様々な企業の事例を学ぶことで、より実践的なスキルを身につけることができます。

さらに、他の産業医との交流を通して、情報交換や意見交換を行うことも有効です。産業医会などの団体に所属することで、他の産業医と交流する機会を持つことができます。

このように、産業医として成長し続けるためには、資格取得後も、積極的に学び続ける姿勢が大切です。

産業医/健康経営エキスパートアドバイザー 角田拓実

参考

  • 日本医師会によると、単位シールの出品は9月上旬に確認されたが、現在は全ての情報が削除されているという。厚生労働省から再発防止策の要請を受け、同会は、単位シールに管理番号などを入れて受講者が分かるようにする。フリマサイト運営者には今後、出品されないように申し入れ、警察にも相談した。産業医は、従業員の健康管理のため企業が選任する医師で、50人以上の事業所では選任が義務づけられている。同会によると、現在資格を持つ人は全国に約7万人いる。