愛知つのだ産業医事務所株式会社の産業医角田拓実です。

今回はお問い合わせでよくいただく質問の一つである「衛生委員会への産業医の出席は義務であるか?」に回答を行っていきます。

職場の健康問題に関して意見をやり取りする場である衛生委員会ですが、先生の都合と折り合いがつかないことも多く不参加が目立っているとのことです。

そもそも衛生委員会の目的と役割とは

衛生委員会は、会社で働く人たちの健康を守り、安全で快適な職場環境を作るために、会社と従業員が協力して話し合う会議のことです。 衛生委員会は、会社の健康管理部門と従業員代表で組織され、定期的に会議を開き、職場における健康と安全に関する様々な議題について話し合います。

例えば、次のような議題について話し合われます。

  • 健康診断の結果報告と改善策:前回の健康診断で「要経過観察」と判定された従業員の数を報告し、生活習慣病予防のためのセミナー開催など、具体的な改善策を検討します。
  • 職場における病気やケガの発生状況と予防対策:過去1年間で発生した事故や怪我の件数を報告し、危険箇所の特定や安全対策マニュアルの見直しなど、再発防止策を議論します。
  • メンタルヘルスの不調者の発生状況と対策:メンタルヘルス不調により休職した従業員の状況を報告し、ストレスチェックの実施や相談窓口の設置など、従業員の心の健康を守るための対策を検討します。
  • 長時間労働者の削減に向けた取り組み:長時間労働をしている従業員の現状を把握し、業務の効率化や休暇取得の促進など、労働時間の削減に向けた具体的な対策を計画します。
  • 職場環境の改善策:職場環境測定の結果を踏まえ、照明の明るさや室温の調整、休憩スペースの拡充など、より快適な職場環境作りのための改善策を話し合います。
  • その他、従業員の健康や安全に関すること:VDT作業者の眼精疲労対策や、インフルエンザ流行期の予防対策など、従業員の健康を守るための様々な議題が話し合われます。

衛生委員会は、法律で設置が義務付けられている会社と、努力義務とされている会社があります。会社の規模や業種によって異なりますので、詳しくは自分の会社の就業規則を確認してみましょう。

産業医の衛生委員会への出席義務について

産業医の衛生委員会への出席は、義務なのでしょうか?それとも任意なのでしょうか?これは多くの担当者・産業医が疑問に思う点でしょう。結論から言うと、法律上は「必ずしも毎回の出席が義務付けられているわけではない」というのが現状です。

労働安全衛生法第18条では、事業者は労働者の健康を管理するために衛生委員会を設置し、事業者、労働者の代表者、そして産業医が参加することが求められています。しかし、産業医の出席については必ずしも出席が必須とは言われていません(委員として選出する必要はあり)。

法律上は必ずしも毎回の出席が義務付けられていないとはいえ、産業医には労働者の健康を守るという重要な役割があります。

産業医の役割を考えると産業医及び事業者は衛生委員会への積極的な参加を検討すべきでしょう。衛生委員会は、職場環境の実態や労働者の健康状態に関する最新情報を得られる貴重な場です。積極的に意見交換を行うことで、現場のニーズをより深く理解し、労働者の健康を守るための効果的な対策を提案できるようになります。

衛生委員会への出席は、法律上の義務を超えて、産業医としての責任を果たすための重要な機会と言えるでしょう。

まとめ

衛生院会に関しては法律上「委員として選出する必要はあるが、必ず毎回の出席義務はない」ということが現状です。

しかしながら、内容の趣旨としてはやはり参加していただき職場の健康問題に関して意見を交わしていただくことが望ましいです。

時間が無いので押印で対応のケースもございますが、産業医・事業所共に協力して参加の機会を作っていくことが望ましいでしょう。

参考にしていただき、より衛生的で働きやすい職場環境づくりを進めていただければ幸いです。

愛知つのだ産業医事務所株式会社 産業医 角田拓実